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デジタル一眼、販売台数・金額で前年割れ、05年8月以来初めて

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デジタル一眼、販売台数・金額で前年割れ、05年8月以来初めて ――マイクロフォーサーズの台頭で変わる市場構造


 デジタル一眼の販売台数前年同月比が09年9月で3.8%減、金額も3.4%減と、いずれも前年を下回った。これまで金額では前年を割ることもあったが、台数で前年同月を下回ったのは、BCNが比較可能なデータを保有する05年8月以来初めて。一方で、ミラーとプリズムのない「マイクロフォーサーズ規格」のデジタル一眼が台数構成比2割に近づくなど、市場構造も大きく変化しつつある。全国主要家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で明らかになった。

 
図1 <デジタル一眼の台数・金額前年同月比と平均単価>
デジタル一眼の台数・金額前年同月比と平均単価

●前年割れの要因は単価の上昇

 4年以上の期間にわたって、デジタル一眼は販売台数で前年同月比プラスを維持してきた。しかし、この9月に96.2%と3.8%減を記録し前年を割り込んだ。デジタル一眼の販売台数は05年10月には同125%増を記録、ピーク時の07年6月には153.1%増と大幅な伸びを記録していた。しかし景気後退の影響を受け08年には伸び率が鈍化。09年に入って1月、2月、4月と金額が前年を割る月も散見されはじめ、8月には台数2.4%増、金額4.6%増とほぼ前年並みの水準になっていた。

 前年割れの要因として考えられるのは単価の「上昇」。08年9月時点で税抜き平均単価(以下同)は9万3600円だったのに対し、09年9月に9万4000円と0.4%とわずかながら高くなった。薄型テレビやパソコンが軒並み値を下げる中、単価が上昇したことによって、これまで低価格を武器に売り上げを伸ばしてきた販売台数にブレーキがかかった格好だ。

 価格帯別の販売台数構成比をみると、08年9月では8万円未満の製品が49.6%とほぼ半数だったのに対し、09年9月では同41.0%と8.6ポイントも減少している。一方拡大が目立つのは8万円-12万円の価格の製品で、08年9月に36.5%だったものが09年9月には50.1%と過半数を占めるまでになっている。単価の急激な下落はメーカーや販売店の収益を圧迫するため、価格は健全化しつつあると見ることもできる。しかし一方で市場の勢いをどうやって維持するかという大きな課題もある。

 
図2 <デジタル一眼の価格帯別販売台数構成比>
デジタル一眼の価格帯別販売台数構成比


 デジタル一眼はキヤノンとニコンの2強市場だが、単価が大きく変動しているのがニコンだ。ライバルのキヤノンとは激しいシェア争いを繰り広げながらも平均単価は1割から2割程度安い価格を維持してきた。しかし、09年は新製品の投入によるラインアップの変更に伴なって単価が上昇。8月、9月ではキヤノンを上回っている。キヤノンと並んで市場への影響力が大きいニコンの平均単価が上昇したことが、市場全体の平均単価を押し上げる一因にもなった。

 また、この単価上昇の影響で、ニコンはシェアを落としている。それまで30%台を維持しながらキヤノンと競っていた販売台数シェアだが、7月に27.8%に下落。9月には24.2%と大きくシェアを落とし、キヤノンとニコンは20ポイント以上も差が開いた。これまで磐石だったキヤノンとニコンの2強体制が揺らぎ始め、市場構造が大きく変わろうとしているようだ。

 
図3 <デジタル一眼の主要メーカー別販売台数シェア>
デジタル一眼の主要メーカー別販売台数シェア
 
図4 <デジタル一眼の主要メーカー別平均単価>
デジタル一眼の主要メーカー別平均単価

 ●高めなのに好調、マイクロフォーサーズに期待


 
図5 <デジタル一眼のタイプ別販売台数構成比>
デジタル一眼のタイプ別販売台数構成比

 構造変化の中心的な存在になりそうなのが、マイクロフォーサーズ陣営だ。現在はオリンパスとパナソニックの2社が製品を販売している。夏以降市場を活性化しているのはオリンパスが7月に発売した「OLYMPUS PEN EP-1」とパナソニックが9月に発売した「LUMIX GF1」。いずれも発売以来好調で、これらを含むマイクロフォーサーズ製品がデジタル一眼市場に占める台数構成比も9月で16.3%と拡大してきた。デジタル一眼全体の販売台数シェアでも、EP-1が5.8%で4位、GF1が5.1%で6位につけている。

 さらにマイクロフォーサーズ製品は平均単価が高めだ。通常のデジタル一眼レフの9月の平均単価は8万9600円、一方マイクロフォーサーズの平均単価は9万3300円と3700円も高い。にもかかわらず好調なのは、コンパクトでありながら撮像素子はフォーサーズと同じサイズで画質はまずまずという製品が他にないためだと思われる。コンパクトカメラからステップアップしたいが、大きなデジタル一眼レフは敬遠していた層や、従来のデジタル一眼レフのサブカメラを求めていた層が購入しているようだ。発売当初の勢いをどれだけ維持できるかという課題はあるものの、魅力ある製品なら多少高くても受け入れられる好例といえそうだ。

 ちなみに、08年の9月の機種別ランキングではトップ10中キヤノンが4モデル、ニコンが4モデル、ソニーが2モデルという構成だった。しかし09年9月では、キヤノンが2モデル、ニコンが3モデル、オリンパスが1モデル、パナソニックが3モデル、HOYAが1モデルと、ここでも上位の顔ぶれが大きく変化してきている。

 デジタル一眼の08年年末商戦は低価格モデルが多く販売され、平均単価が大きく下がった。そのため、09年は年末商戦に向けまだ台数、金額で前年を下回る場面が何回か訪れることも予想される。しかし、マイクロフォーサーズのような新たな製品の拡大が市場を下支えすることも考えられ、年末商戦を乗り越えれば以降は再び前年比プラスに転じる可能性も大きい。
 
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