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デジタル家電、 2か月連続で増税後最低水準――円安・株高でもBCN指数「93.2」と低迷、求められる新カテゴリー製品

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 アベノミクス効果も手伝って、徐々に回復の動きを示していたデジタル家電市場だが、ここにきてその足取りが重くなっている。148品目にわたるデジタル家電市場の販売金額・前年同月比を表すBCN指数が、9月、10月の2か月連続で93.2と4月の増税後最大のマイナスに低迷しているからだ。8月には98.8と前年並みに近づいたものの逆戻り。円安と株高が一層加速する経済情勢でも、デジタル家電市場へのプラスの影響は、いまのところほとんどないようだ。全国の主要家電量販店などの実売データを集計する「BCNランキング」で明らかになった。
 

■足踏み要因の一つは円安による物価高

 BCN指数は、3月に生じた消費税増税前の駆け込み購入の反動減で、4月、半年ぶりにマイナスに転じた。その後、6月の96.1をボトムに徐々にマイナス幅を縮小し、8月には98.8と前年超えまであと一歩の水準まで回復した。しかし、9月、10月と2か月連続で増税後最低の93.2を記録。反動減を乗り越えつつあるように見えたが、ここにきて足踏みが続いている。

 この2か月の経済情勢で目立った動きと言えば、円安・株高の一層の進行だ。ドル円の為替レートは、8月終値の1ドル104.1円から10月終値では112.3円と7.9%も急落、これに呼応して日経平均株価は8月から10月にかけて6.4%の上昇を果たし、11月に入って一時1万7000円を突破する場面もあるほどの活況だ。しかし、デジタル家電の販売金額はマイナス幅を広げ逆行する動き。株高が景気回復を加速すれば、デジタル家電市場にも、当然プラス効果は生まれる。しかし、円安による物価上昇の動きが出始めたのに加え、折からの天候不順で、特に9月以降、もっとも身近な食料品を中心に価格の上昇が目立ってきたこともマイナスに働いている。4月の消費税増税と併せ消費マインドを冷やす結果になっているようだ。
 

■地デジ化特需の反動減から回復する際には後押しになったが……

 12年12月に発足した安倍政権がアベノミクスを提唱すると、歩調を合わせるように円安が進行、同時に株価は急上昇した。地デジ化特需の反動減の傷がようやく癒えようとしていたデジタル家電市場は、上向きの経済環境に支えられ、13年夏あたりからなんとか前年を上回る程度にまで回復をはたしてきた。
 


 ただ、株価が大幅高を演じた割には、デジタル家電市場の伸びは今一つ。増税前の駆け込み購入を除けば、地味な動きが続いている。デジタル家電市場は回復基調にあるのは間違いないものの、その力はまだまだ弱いと言わざるを得ない。
 

■わずかだが液晶テレビが再び前年割れ、ノートPCも下げ幅広げる

 製品カテゴリー別では、5月以降5か月連続で販売金額が前年を上回っていた液晶テレビは10月、前年同月比で97.9%と、わずかながら前年を下回った。レコーダーの販売金額も89.8%と2ケタ割れが継続。ノートパソコンも75.1%と大幅に前年を下回っている。一方、タブレット端末は、iPadの新製品登場などで、146.6%と大幅増を記録した。しかし、ノート、デスクトップ、タブレットを合わせた販売金額では、83.8%と2ケタ割れを喫しているのが現状だ。デジタルカメラは107.3%と増税後初めて販売金額が前年を上回った。とはいえ、この10月に販売金額が大きく伸びているわけではない。昨年10月に前月比で19.1%も販売金額が落ち込んだ反動だ。いずれも迫力ある伸びを示しているカテゴリーは見当たらない。

 これまで各カテゴリーで生じていた平均単価の上昇だが、10月は一服感が強い。液晶テレビやノートPCは価格の下落傾向が出てきた。にもかかわらず販売が伸びない状況が生じている。価格は上げたいが、売り上げの縮小が大きく、上げられない。しかし、価格を下げても売れないという事態も生じかねない。年末商戦に向け、黄色信号がともっている。
 


 日銀が10月31日に発表した追加金融緩和の影響で、さらなる円安の進行ともう一段の株高も期待される。円安に振れれば、株式市場の6割を占めるといわれる外国人投資家から見た日本株は割安になるため、株価の上昇が起きやすい。しかし、貿易収支が赤字の日本では、円安によるデメリットも徐々に無視できないものになってきた。これ以上の円安で単に株価を上昇させるだけでは、デジタル家電市場には大きなプラスの影響はなさそうだ。ウェアラブルディバイスや、モノのインターネットなど、ところどころで見え始めている新たな市場の萌芽をとらえ、まず形にしてみせることが求められている。
 
BCNでは全国の量販店22社(アベルネット、アマゾンジャパン、エディオン、NTTレゾナント、ケーズホールディングス、サンキュー、上新電機、スタート、ストリーム、ソフマップ、ZOA、トスパラ、ナニワ商会、ビックカメラ、ピーシーデポコーポレーション、ベスト電器、三星カメラ、ムラウチドットコム、MOA、ユニットコム、ラオックス、楽天ブックス=50音順・2014年11月1日現在)のPOSデータを日次で集計したBCNランキングを公表しています。

*集計対象の社数は、当社と販売店との間でデータ提供契約を締結している法人数をカウントしています。
 
株式会社BCN
101-0047 東京都千代田区内神田2-12-5 内山ビル
TEL 03-3254-7801   FAX 03-3254-7808
※本件に関するお問い合わせは下記までお願いします。
BCNアナリスト 道越 一郎

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