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デジタル家電、高付加価値モデル好調 ──高くても「理由」があれば売れる年末商戦の展望

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 付加価値の高いデジタル家電が売れている。4K対応の液晶テレビや地デジチューナーを6基以上搭載する「全録レコーダー」、重量が1kg未満の軽量ノートPC、ハイレゾ対応の携帯オーディオプレーヤーなど、それぞれ販売台数前年比で200%以上の売れ行き。年末商戦に向け、ワンランク上の高付加価値製品群を中心とした商戦が活発化しそうだ。全国の主要家電量販店などの実売データを集計する「BCNランキング」で明らかになった。

■依然好調4Kテレビ、中心サイズは40型台に

 液晶テレビ市場は、販売台数こそ5か月連続で前年を割れているものの、販売金額は7か月連続で前年を上回り、構造変化が続いている。画面サイズの大型化と、4K化の両面で平均単価が上昇しているからだ。液晶テレビ全体の画面サイズ別販売台数構成比では、この10月に初めて40型台の構成比が28.73%と最大になり、これまで最大だった30型台(28.68%)をわずかながら上回った。平均画面サイズも34.7と32を大きく上回っており、テレビの中心サイズ帯は40型台にシフトしたといっていい。

 4Kテレビは10月時点で販売台数の12.9%を占め、一つのカテゴリーとして確立したが、50型以上の大型テレビでは52.9%と過半数を占めており量販店で主役の位置づけが定着している。販売台数前年同月比では継続的に200%を上回り、直近の10月でも264.9%を記録、売り上げを伸ばしている。平均単価(税別、以下同)は、この5月に19万4000円と一時20万円を割り込んだが、以降20万円台を維持しており、大きな値崩れは発生していない。画面サイズ別の販売台数構成比では、40型台が42.6%と最大。以前主流だった50型台を、9月以降上回っている。
 

 

■全録レコーダー市場、ようやく立ち上がる

 9月、10月と販売金額が前年を上回り、回復の兆しが見えてきたレコーダーだが、ここに来て高付加価値モデルが立ち上がってきた。特に地デジチューナーを6基以上搭載し、地デジ全局を同時に録画できる、いわゆる「全録レコーダー」が売れ始めているからだ。10月の販売台数前年同月比は378.3と4倍近い売り上げを記録。昨年10月には販売台数構成比がわずか1.8%に過ぎないニッチ市場だったが、この10月には、6.5%と構成比が広がってきた。

 火付け役はパナソニックの夏モデル。平均単価8万円台と手ごろな価格で全録が楽しめるとあって、発売直後から人気を博し市場を活性化させた。メーカーシェアでも、全録レコーダーで唯一のライバル、東芝を大きく引き離し、6月には90.6%を記録。以降9割前後のシェアを維持している。パナソニックはレコーダー全体でも5割弱のシェアを維持するダントツの存在で、こうした多チューナー戦略も奏功しているものと思われる。
 

 

■苦戦続くパソコン市場で、軽量ノートが高い伸び

 2014年6月以来、17か月連続で販売台数・金額とも前年割れで不調続きのパソコン市場。Windows10効果も手伝って、徐々に回復の兆しが見えつつあるものの、依然として前年並み水準には手が届かない状態だ。しかし、この4月以降、1kg未満の軽量ノート市場が立ち上がっている。

 この市場は、NECとパナソニックでほぼ2分し、平均単価10万円以上の高級ノートPCのカテゴリだった。2月に、台湾のPCメーカーASUSが3万円台の格安製品を投入したことで、市場が一気に活発化。販売台数前年同月比で7月に一時479.0%と5倍近い売り上げを記録した。その後売り上げはやや落ち着いたものの、この10月時点でも240.4%と倍以上の売れ行きを保っている。高価なNECやパナソニックの製品も同様に販売台数を伸ばしており、安いASUSの製品が市場のカンフル剤になった格好だ。
 

 

■携帯オーディオ、ハイレゾで復活か

 スマートフォンの台頭で市場が縮小している携帯オーディオだが、この10月、昨年11月以来ほぼ1年ぶりに販売金額が108.6%前年を上回った。販売台数前年同月比は89.8%と依然2桁割れの水準ながら、ハイレゾモデルの拡大で平均単価が上昇したためだ。13年10月にソニーがハイレゾ対応ウォークマンを発売して以来立ち上がった市場だが、このところ大きな伸びが続いている。この10月にソニーが発売した新製品も好調で、ハイレゾ対応製品の販売台数前年同月比は237.0%を記録した。販売台数構成比は10月に18.2%まで拡大しており、大きな市場に成長しつつある。しかしソニーが台数シェア98.1%を握る寡占市場。さらなる市場の拡大にはライバルの登場も必要だろう。
 



 4Kテレビや全録レコーダー、軽量ノートPCやハイレゾ携帯オーディオといった高付加価値モデルの売り上げが伸びているのは、価格が手頃になってきたからに他ならない。しかし、当該カテゴリー全体の平均単価に比べれば高価な製品群であることもまた事実だ。デジタル家電は高くても理由があればまだ売れる。単に安いだけではなく、価格と付加価値のバランスがとれたワンランク上のデジタル家電が、今年の年末商戦の目玉になりそうだ。
 
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*集計対象の社数は、当社と販売店との間でデータ提供契約を締結している法人数をカウントしています。
 
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